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きらめく人たちにインタビュー

第1回更級日記千年紀文学賞 大賞受賞! 白井市在住の長野和夫さん

平安中期の女流日記文学としてあまりにも有名な「更級日記」。そのゆかりの地である千葉県市原市で「更級日記千年紀文学賞」が創設され、第1回受賞作品が決まりました。

白井市在住の長野和夫(ながの かずお)さんが、小説「月下の運動会」で一般の部の大賞を受賞されました。授賞式は2021年11月に執り行われます。

 

※小説「月下の運動会」全文が更級日記千年紀ホームページで公開されています。こちらからご覧ください。

第1回更級日記千年紀文学賞とは、

平安時代の女流文学作品として名高い「更級日記」。2020年は、作者である菅原孝標女が、帰京のため市原市にあった上総国府を出発した1020年から千年の節目の年です。更級日記を通じて、文字として書き表すことが時代を超え、人々の暮らしや文化、土地の風景、心の機微、感動を伝えることができる貴重な手段であることを改めて見つめ直すきっかけとなるよう「更級日記千年紀文学賞」を創設しました。

(出典:市原市役所ホームページより抜粋)

一般の部の選考委員長で作家の椎名誠さんは、長野さんの作品を「最終選考候補作品の中で群を抜いて小説作りがうまいと感じた。含蓄のある奥の深いものであった。タイトルもうまく、読む人を引き付けている」と評した。

(出典:yahooニュース(産経新聞)2021年9月26日抜粋)

第1回更級日記千年紀文学賞一般の部の大賞受賞者 長野和夫氏

第1回更級日記千年紀文学賞大賞(外部リンクします)を受賞された長野和夫さん。

※撮影時のみマスクを外して頂きました。

更級日記とは、

平安中期、菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)が書いた日記文学であり、作者13歳のおり、父の任地上総国(千葉県中央部)から帰京の旅に筆をおこし、以後40余年に及ぶ半生を自伝的に回想したものです。

市原で育った菅原孝標女の人生回想録
更級日記は、作者の菅原孝標女が、寛仁4年(西暦1020年)に父の菅原孝標が上総の国の国司の任期を終え、共に帰京した13歳の頃から始まり、50代までの約40年間を書き綴った回想録です。孝標女は物語の世界に強いあこがれを抱き、『源氏物語』の夕顔や浮舟のような恋愛に焦がれる娘でした。前半は、上総の国から東海道を京の都まで旅した時の風景や出来事を綴る紀行文になっています。約90日にも及ぶ大変な旅でしたが、道中で目にする富士山や浜名の橋(浜名湖)で見た波に感動している姿も書かれています。また、京に戻ってからは、親しかった継母との別れ、愛する乳母や姉の死、家の火事など厳しい現実がありました。その後、宮仕えや結婚を経て、物語の世界と現実の違いを認識し、夫や子どもの将来を願うという現実的な夢を追うことになりました。しかしやっとのことで信濃守になった夫が急死し、孝標女は悲しみに暮れます。

更級日記は、孝標女の自叙伝であり回想録です。更級日記からは、平安時代の中流貴族の生活や当時の女性の生き方がはっきりと読み取れます。

上総の国への思いが表現されている冒頭部分
更級日記の冒頭には「あずまぢの道のはてよりも、なほ奥つかたに生い出でたる人~」とあります。これは「京から東へ続く道(東海道)の終わりまで行ったところから、さらに奥に行ったところ(上総の国)で成長した人」という意味で、孝標女が市原で育ったところとして記されています。ここ市原を子どもの頃に暮らし、自分を育ててくれたふるさとと感じているからこその表現と考えられます。

月もいででやみに暮れたる姨捨に何とて今宵たづね来つるらむ
この姨捨山は夫が晩年に国司を務めた信濃国の更級郡にあり、作品名の由来となりました。全体に『和泉式部日記』や『蜻蛉日記』のような盛り上がりはありませんが、そのぶん静かに流れるような文体は、受領階層の娘がたどる人生の現実を切なく表現しており、諦観の調べが心地よいものとなっています。要所要所に見える巧みな月の描写が印象的です。

(出典:更級日記千年紀2020ホームページ

長野和夫さんにお聞きしました!

Q:文学作品の執筆活動を始められた経緯を教えてください。

 

私は10年程前に定年退職を迎え毎日を悠々と過ごしておりまして、潤沢な時間を様々な「公募」にチャレンジする時間としてみようと思いました。

 

元々物書きをすることが好きだったので、退職後10年間にエッセイ、童話、小説、短歌、川柳まで応募しています。そんな中でいくつか受賞させて頂きました。

 

Q:更級日記千年紀文学賞はどのように知られたのですか?

 

ウェブサイトで市原市が「第1回更級日記千年紀文学賞」を新設されたことを知りました。そこで「よし!応募しよう」と思い、図書館に行き調べ執筆し始めました。更級日記の現代語訳や市原市の風土・歴史に関する本を読んでいくうちにイメージが湧いてきました。執筆し始め作品は約1ヶ月で書き上げました。

 

Q:作品を1ヶ月で書き上げられたのですか?

 

はい、書きましたね。応募することが目的ですから、元々入賞するとは思っていませんので、参加することに意義がある!と思っていました。

Q:作品はどのくらい書かれていますか?

 

公募入賞した作品は22作品あります。実は40年間務めた新聞記者を定年退職しました。現役時代は小説など書いた事もなかったのですが、論文などの物書きは好きで書いていましたね。

 

定年退職後は色々な作品を書いてみたいと思い、公募ガイドを見てとにかく執筆して応募しています。

 

Q:白井市にはいつからお住まいですか?

 

東京の新聞社を定年退職したあと、縁あって仙台の私立大学に招かれて仙台で10年程過ごしました。大震災の2011年に2度目の定年を迎え、東京勤務時代に住んでいた温暖な千葉に住もうと思い、2014年から白井市に住んでいます。

Q:白井市を題材にした作品はありますか?

 

はい、書きました。実は「広報しろい」にまち・ひと・しごと創成審議会の市民代表委員募集の記事を見て応募したところ、採用されました。

 

白井市の知名度を上げるために3月の「ホワイトデー」を「白井の日」にして、白一色のお祭りをしたらどうかと提案しました。その結果、「しろいホワイトフエスティバル」の実施が決まり、山形から雪を運んで雪山を築き、白い食べ物の屋台を並べるなどのお祭りが3年継続して行われました。

 

それを題材に市の若手職員がホワイトデーを白井の日にする企画を立て、苦労を重ねながらホワイトフェスティバルを成功させるというストーリーの「ホワイトデー」というタイトルの小説を書いて千葉文学賞に応募しましたが、残念ながら落選しました。

Q:作品についてでも結構ですが、素晴らしいと思う作家を教えてください。

 

私は新聞記者でありましたから、ノンフィクション作家が好きで戦艦武蔵などを執筆した吉村昭は好きですね。司馬遼太郎など史実に基づいたノンフィクション作品は好んで読みます。海外の推理小説ではアンドリュー・クラヴァンも何度も読みました。

 

Q:出版した本などはありますか?

 

私は本は書いていないのですが、ひと作品「納税者の反乱―許すな税金のムダ遣い 」(マネジメント社)という本は出版されました。全国の草の根の行革グループの奮闘ぶりを書きました。

Q:白井市の子供たちに「本の世界」についてメッセージをお願いします。

 

本は自分の知らない世界や生き方を体験することができます。

 

私は中学生の時に、郷土の大先輩から幸田露伴の「五重塔」の文庫本を頂きました。文語体で書かれた難解な文章で、とても読めないと返そうとしたら「そのうち読めるようになるから、何度でも読んでごらん」と言われました。

読み続けているうちに、仕事仲間から「のっそり」と小馬鹿にされていた宮大工の十兵衛が五重塔を見事に建てるストーリーの全容が頭にしっかりと描きだされ、その不屈の職人魂が私の人生を支える大きな力となりました。

 

本を読んで心に残った事柄を心に刻めば、きっと人生の支えになると思います。

 

長野和夫さん、ありがとうございました。


謝意:取材をさせて頂いた長野和夫さんはとても上品な紳士で、憧れるような雰囲気をお持ちでした。歳を重ねて長野さんのような風貌になれたらいいなとも思いました。入賞した作品は22作品もあること、これから実現したい事についてもお聞きし、更に作品を執筆されることを期待いたします。

長野さん、貴重な楽しいお話を沢山お聞かせ下さり、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。(2021年9月21日取材)

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。