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第21回白井市文化財講演会 ~守ろう、郷土の文化財!~

2022年6月25日、白井市文化会館かおりホールにて「第21回 白井市文化財講演会」が開催されました。

民俗文化研究所 小川 浩 先生

白井市内の歴史や文化財に関わる講演会でした。

今回の講演会では、まず現代社会の中での民俗調査の位置づけについてお話しいただきました。社会の変化の中で伝統的な生業は理解が難しくなり、調査ができる人材も少なくなっているそうです。

そうした中で、柔軟に物事を見ながら、現代社会を見ていく「知見」の必要性にも先生は言及され、白井市の地図を上下反転させるだけでも、白井市の見え方が変わるとしてお話しされていました。また、これまで 白井市教育委員会で刊行した『歴史のしずく』や『しろいのあゆみ』、今井庄一さんの『沼と生きる今井の生活誌』などの資料を交えながら、白井市の民俗調査 について小川先生の調査に基づいて発表されました。

講演会で紹介された調査資料を一部ご紹介します。

民俗文化研究所 小川 浩先生

民俗文化研究所 小川 浩先生

ご略歴:小川先生は野田市の出身で、国学院大学大学経済部卒業後、教師として、千葉県立の柏、野田北、東葛飾高等学校他で日本史の教鞭をとる傍ら、民俗学の研究に勤しんできました。先生は特に職人にスポットをあてた研究に定評があり、『野田の樽職人』や『鎌ヶ谷市史民俗編』『流山市史民俗編』などの著書がございます。

退職前より、昭和女子大学の講師を務められ、流山市文化財審議会長、鎌ヶ谷市文化財審議会長、野田市市史編纂委員を歴任されています。また、民俗文化研究所を立ち上げられ、白井市で平成30年より民族調査を実施し、この3月にその成果を報告書としてまとめられております。

白井市文化会館2Fにあるかおりホールにて開催されました。

井上教育長を始め、主催する白井市職員の皆さんも興味深く聞き入っています。

「白井市の民俗調査報告 ~衣・食・生業~」

民俗文化とは・・・、

歴史(学)の三分野のことを言います。

1:歴史学(文献史学)=歴史文化

2:民俗学=習俗・伝承文化

3:考古学=無文字文化

 

今回の講演会は、白井市の民俗調査について小川先生の調査に基づいた発表です。講演会で紹介された調査資料を一部ご紹介します。

 

広報しろいで平成19年4月より連載してきました「歴史のしずく(1冊900円)」の連載が平成29年4月で10周年を迎えたことから、これまで掲載された114回の記事を1冊の本にまとめました。約2万7千年前から現代まで続く白井市の歴史のトピックがまとめられています。平成29年9月に完売しましたが、増刷しましたので、販売を再開しています。(出典:白井市ホームページ

※以下記載する文献は「第21回白井市文化財講演会 ~守ろう、郷土の文化財!~」資料より一部抜粋

 

(1)書き留められた生活誌

『沼と生きる今井の生活誌』によると、今井地区は台地から遊離した低地が生活の拠点であるため、低地故に水との共生が避けられず、独特の生活があった。それは次のような「生活の知恵」を編み出したそうです。

 

掘抜井戸

昔から各家にあった上総堀井戸で、昼も夜も自然に湧き出ていて夏は冷たく、冬は暖かく感じたという。しかし、昭和30年代(1955年~)からポンプ井戸に変化した。

 

今井の土持ち

低地故先祖は宅地を少しでも高くするために、土持ち(土運び)といって土を籠に入れて担ったり、背負たりして運び、この作業を一生かけてやったという。

 

水塚(みずか)の生活

今井地区は毎年入梅に入ると、沼の水位が上がり、水車による「水払い」が行われた。1台の水車に2人で交代しながら行い、交代時間は線香を利用した。

 

水車(みずぐるま)

今井地区は毎年入梅に入ると、沼の水位が上がり、水車による「水払い」が行われた。1台の水車に2人で交代しながら行い、交代時間は線香を利用した。

 

通常は水車で田に水をくみ上げるそうで、水を逆にくみ出すのは低地ゆえの今井地区の特徴だそうです。

民俗行事の変化

 

昭和58年(1983年)に白井では降雹被害があり、廃業する梨農家もあったそうです。廃業は民俗行事にも影響し、それまでは農業に関係する行事が多くあったのが、廃業後はそうした行事がなくなり、個人の趣味の活動を増やすことで地区とのコミュニケーションを維持する状況が分かるそうです。

(1)衣生活

子供の晴れ着などは、実家から贈答(返礼を伴う)でなく、贈与(返礼なし)という民俗行動様式が現在も敢行されいていることが確認された。

 

これは、嫁入りした際に、嫁の実家は婿の家に対してというよりも、孫に対して贈与していくものなのだそうです。

 

注目すべきは「雨具」の項目で、ササメ(莎草)を原料とするミノ(蓑)作りの報告である。ササメは旧小金牧内に自生したチガヤ(茅)を利用した。『印西町史民俗編』や『柏の民俗考察編』などにミノやトバ(芽)編みが報告されている。

 

(2)食生活

食べ物のなかでも赤飯・小豆粥・バラッパマンジュウ(小麦饅頭)や餅は、礼儀食と呼ばれる非日常の食べ物であった。

 

バラッパマンジュウはこの地域にしか無いものだそうです。今話題になっている葉包み文化の一つが変化したもので、本来は饅頭を蒸してから包んでいたものが、葉を敷いて蒸すように変化したのではないかとのことでした。

今回は調査しきれなかったそうですが、戦前には年中行事で今よりもモチを搗いて食す機会が、多かったそうです。

農具の実測図と使用法

農具の実測図を稲作から田植えまでの鍬・万能・田下駄・大足・三角定規・苗籠を実測した。続いて収穫関連の蓑・操り棒も実測し、これらの使用法に言及し、貴重な資料となっている。

実際の使用法のイラストも作成したそうです。講演では農具の実物も紹介されました。

この道具は、いつどのようにして使用するでしょう?

田植定規なんです。使用方法を解説して頂くといつも感動させられます。「なかった道具を作る、先人の発想はいつもスゴイ!」

 

田植え時に均等に植えられるよう、目印も刻印されている優れもの。定規の幅は除草機の幅に合わせて全国でほぼ統一されているそうです。想像できましたか?!

参考文献

小川浩ほか2022『白井市の民俗3~衣・食・生業~』白井市文化財基礎調査報告書第15集 白井市教育委員会


謝意:白井市史について取材をしたいと思っている、しろいまっち編集部も更に研鑽し様々な情報発信に、改めて挑戦していきたいと思いました。白井市教育委員会からの情報を頂きながら、市史に基づいて正確な情報発信をしていきたいです。とても貴重な講演会を拝聴し、白井市教育委員会の皆様にはいつもご協力下さり、取材させて頂きました事を御礼申し上げます。

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。