しろいの梨
地元白井市の橋本梨園の橋本 哲弥さんが、私達が普段知ることのない梨の魅力を教えてくれました。
2023年7月3日(月)白井コミュニティセンターにて「梨講座」が開催されました。
講師の橋本 哲弥さん(橋本梨園)
●しろいで主に作られている梨
●全国の梨
●色合いと形状
●完熟より適熟
白井市は、収穫量と栽培面積が全国第一の千葉県で最大の梨の産地*なんです! 産出額が白井市はトップ。そのあと市川市、鎌ヶ谷市、船橋市が続き、4市で千葉県の50%以上の産出額を占めています。
*令和2年度農林水産省市町村別農業産出額(推計)より
現在の梨のルーツを辿るとその多くが「二十世紀」だとか。二十世紀梨といえば松戸(現在の松戸市二十世紀が丘)が発祥の地です。ゴミ捨て場に生えていたそうですよ、二十世紀梨の苗木が! その苗木を持ち帰って育てた農家さん、スゴイ人です…。
現在では二十世紀は千葉県では殆ど栽培されていません(栽培地は関西圏に移動しました)。幸水と豊水に替わっていきました。全国でも幸水と豊水が66%のシェア率を占めています。
日本で一番つくられている品種
登録年:1959年
栽培地域:日本全国
収穫期:8月上旬~8月中旬
果実重:300~400g
形状:やや偏円形
糖度:高い
酸味:ほとんどない
肉質:緻密でみずみずしい
日持ち:悪い
心腐れ症がでやすい
日本で二番目につくられている品種
登録年:1972年
栽培地域:日本全国
収穫期:8月下旬~9月上旬
果実重:400g前後
形状:やや楕円形
糖度:高い
酸味:ややある
肉質:柔らかく果汁は梨の中でも特に多い
日持ち:幸水よりやや良い程度
ほど良い大きさでたくさん採れるが、みつ症がでやすい
かおりは俗称だそうです。正式名称は平塚16号といいます。
芳香をもつ大きな青梨
登録年:-(1975年試験中止)
栽培地域:-
収穫期:9月上旬~9月中旬
果実重:500~1,000gで大果
形状:やや偏円形
糖度:普通
酸味:ほとんどない
肉質:若干粗く、食感も楽しめる
日持ち:良い。熟れて芳香を放つ黄ばんだ熟果は短い
袋掛けをしないと果皮にサビ(染みや汚れ)がでやすい
梨界期待のサラブレッド
豊水の果汁の多さ、新高の形の良さ、幸水の甘みを合わせ持ちます。
登録年:2001年
栽培地域:日本全国
収穫期:9月上旬~9月中旬
果実重:500g前後
形状:扁円形
糖度:高い
酸味:ほとんどない
肉質:柔らかめ
日持ち:比較的良い
果形は大変良いが、デベソのようなお尻(ていあ部)の果実が多い
大玉は1kg以上にもなる梨の王様
登録年:1927年
栽培地域:日本全国(四国・九州に多い)
収穫期:9月下旬~10月上旬
果実重:500~1,000g前後
形状:豊円形
糖度:甘い
酸味:ほぼない
肉質:粗めで、梨特有のシャリ感が顕著
日持ち:良い
肌が弱く、収穫後の擦れなどで果皮が黒く変色してしまう。が、味に変わりはない。
お正月まで食べられる貯蔵性の高い梨
登録年:1941年
栽培地域:日本全国(信越に多い)
収穫期:10月上旬~10月中旬
果実重:500g前後
形状:やや楕円形
糖度:甘い
酸味:ほんのりある
肉質:粗めで、ザクザクした食感
日持ち:大変良い
果皮がやや柚子のような質感。受粉樹としても用いられ、交配用の花粉採取に向く
昔主流だった梨の品種として、「二十世紀」や「長十郎」「新水」「菊水」の紹介がありました。
梨の育成は国や県、個人で行われます。県や個人で育成した「ご当地品種」は地域限定でしか栽培できないものがあり(埼玉県の彩玉や鳥取県の新甘泉など)、生産量が少ないため購入場所が限られているそうです。
白井の直売所で見かける「南水」や「にっこり」もご当地品種ですが、日本全国での栽培が許可されています。
「はつまる」「蒼月」「秋麗」「甘太」「秋満月」といった期待の新梨の紹介もありました。「秋満月」は千葉県発の品種です。秋満月を育てている梨農家さんを、しろいまっちで紹介しています↓↓
もうすぐ梨の季節ですね。ぜひ参考にしてください!
■濃茶色より少し赤みがかった色をしている(赤梨)
■黄緑色の中に黄色がまだらに入っている(青梨)
■濃い緑色より少し黄色みがかっている(幸水)
■果点コルク*が目立たない
*果点コルクとは、水分を果実に閉じ込めておくためのコルクの役割のこと
■お尻の部分が膨れ、中心部の穴が凹んでいる
■極端にいびつな形をしていない
美味しいのは、適度に熟れた状態の果実です。
熟れすぎると日持ちが悪く、梨特有のシャリ感が損なわれます。
■熟れすぎた果実の特徴
●全体的に鮮やかな赤色をしている(赤梨)
●全体的に黄色くなっている(青梨)
●緑色が全くなく黄色い(幸水)
●果点コルクが全くなく、肌がツルツルしている
梨の糖成分には
●フルコトース(果糖)
●ソルビトール(糖アルコール)
●グルコース(ブドウ糖)
●スクロース(ショ糖)
以上の種類があり、そのうちの「果糖」と「ショ糖」のバランスで変わってきます。
■果糖
●最も甘味度が高い
●甘さは(口の中で)持続しない
●さっぱりとした甘さ
■ショ糖
●二番目に強い甘味
●(口の中で)持続する甘さ
明治以前の品種の多くはショ糖の含有率が少なく、さっぱりとした味でした。1900年代に入ってショ糖の多い二十世紀が誕生し、二十世紀が育種に用いられることで昭和中期から果糖とショ糖の良さを兼ね備えた品種が登場しました。
■買ったらすぐに冷暗所に
袋や箱から取り出してください。高温は大敵です。熟れすぎてしまいます。
■すぐに食べきれない場合は冷蔵庫へ
ポリ袋や新聞紙で包んで保存するとより良いです。(最近は鮮度保持袋などが市販されています)
■賞味期限
●幸水や豊水は常温で2~3日、冷蔵庫で7日を目安
●新高や新興など日持ちの良い梨は常温でも一週間以上平気
※よく熟れている(色の回った)果実から食べてください!
※出典:「果物ナビ」梨の一番甘い部分はどこ?
■果実のお尻の部分(ていあ部)が一番甘みが強いです。縦に切ると糖度が高い部分も低い部分も楽しめます(上図参照)。
■皮付近の糖度も高いので、皮は薄くむいてください。
梨消費の最大の弱点は、生食以外の加工用途が少ないことです。
●シャリ感あっての梨のイメージ
●果汁にすると味が薄い
●「この料理には梨でなきゃ!」というものがない
梨ジュースなど加工品もあるにはありますが、全国区・通年販売のものはほぼありません。
そこで、皆さんの知恵を貸してください!
生食以外の食べ方で美味しく食べれる方法をご存じありませんか? お待ちしております。
橋本 哲弥 氏(梨園経営者兼ライター)
▼橋本梨園経営
●父の代から梨専業農家に
●1970年代から直売を始める
●2010年からweb販売等を開始し、直売率を向上(65%→99%)
●関連サイト:ホームページ/Instagram/Facebook
▼ライター
●大学卒業後、一般企業の園芸事業部に勤務
●フリーのライターに転身し、後に就農
●現在も農業・園芸関連の実用書、雑誌などで執筆
●農業者向けに経営改善等、生活者に農業の魅力を伝える活動もおこなっている
●書籍:「図解入門ビジネス 最新農業ビジネスがよーくわかる本」秀和システム
●雑誌:「現代農業」2019年4月~2020年4月連載
「農業経営者」「地上」「タキイ最前線」寄稿など
白井市内で梨の直売所が立ち並ぶ季節が、目前までやってきています。みずみずしくて美味しい梨は、やっぱりしろいの梨!!