まちの話題
高齢者の見守りや子育て支援にAIを活用し、「気づく仕組み」を地域に根付かせようとする『Rainbow Project』。今回、『しろいまっち』では、プロジェクトを立ち上げたRainbow Project の Chiyoさんにお話を伺いました。

※写真はイメージです。AIで作成しました。
取材では実際の試作画面も見せていただきましたが、印象に残ったのは「AIで何ができるか」よりも、「人と人をどうつなぐか」を何度も語っていたことでした。育児を続けながら、地域課題に向き合い、仕組みづくりに挑戦する。その背景にある思いを取材しました。
Q:Rainbow Projectを立ち上げようと思った原点を教えてください
父を看取った経験と、娘の子育て経験が原点です。父の闘病中、毎日のように連絡を取っていましたが、今振り返ると「電話の回数が減っている」という小さなサインに気付けませんでした。また、娘も保育園で周囲から理解されにくい場面があり、「良いところ」ではなく「できないところ」に目が向けられてしまうことがありました。
その時に思ったんです。「気づく仕組み」と「良いところを言葉にする仕組み」が社会にあればいいのではないか、と。父と娘、世代は違いますが、どちらも『見えにくい孤立』の中にいたことに気付きました。そこからRainbow Projectが始まりました。

孤独感スコアの推移を見える化した画面。見守りを通じた変化を追えます。※画面はイメージです。Chiyoさん提供
Q:白井市だからこそ感じる地域課題はありますか?
白井市は本当に優しい人が多いまちです。子育て支援も充実していますし、地域の見守り活動も行われています。それでも、発達のグレーゾーンにいる子どもや、一人で悩みを抱える保護者、高齢者の方の「見えにくい孤立」は存在します。誰かが悪いわけではなく、みんな忙しい。だからこそ、人だけでは補いきれない部分を支える仕組みが必要だと感じています。
Q:なぜAIを活用しようと思ったのでしょうか?
AIは24時間、休まず声を掛け続けることができます。もちろん人間の代わりになるためではありません。人が休んでいる時間や、手が回らない時間を補完する存在です。もう一つは、AIは「良いところを見つける」ことが得意だと思ったからです。保護者が気付けない子どもの成長や強みを言葉にしたり、高齢者の変化を記録したりすることで、人と人とのつながりを支えることができると考えています。
Q. 実際にはどのようなサービスになるのでしょうか?
現在は大きく3つの仕組みを試作しています。
| サービス | 対象 | 概要 |
| Adult Connect(アダルトコネクト) | 高齢者・家族 | AIがLINEや電話などを通じて定期的に声を掛け、会話の変化から体調や生活の変化を察知。家族や地域の支援者へつなげることを目指す。 |
| Kids Bloom(キッズブルーム) | 子ども・保護者 | 保護者が子どもの様子を入力すると、AIがその中にある「良いところ」や「強み」を見つけて言葉にする。 |
| 白井市担当者ポータル | 行政職員 | 高齢者見守りの情報を確認・整理し、AIが状況把握や判断を支援する。 |

ひと月の対話・見守りの状況をまとめた月次レポート画面です。※画面はイメージです。Chiyoさん提供
Q:実際の画面を見せていただきましたが、かなり作り込まれていましたね
ありがとうございます。ただ、実は今は「機能を減らす作業」をしています(笑)。最初は色々な機能を入れたのですが、実際に使う高齢者の方や保護者の方にとっては複雑になりすぎると感じました。今は、「本当に必要な機能は何か」を考えながら整理している段階です。また、AIから能動的に「こんにちは、元気ですか?」と声を掛ける仕組みも追加しています。利用者からの入力を待つだけではなく、AIから寄り添うことが大切だと思っています。
Q:実証実験に向けて課題はありますか?
一番難しいのは、緊急時の対応です。例えば長時間反応がなかった場合、誰が確認するのか。行政なのか、地域の見守り団体なのか、ご家族なのか。そこを曖昧にしたままでは運用できません。技術的にはできることがたくさんありますが、地域で運用するにはルールづくりや合意形成も必要になります。だからこそ、行政や福祉関係者の皆さんと丁寧に対話していきたいと思っています。

会話の小さな変化をAIが察知し、地域の支援者が対応する画面です。※画面はイメージです。Chiyoさん提供
Q:白井市だからこそ、このプロジェクトを始めたい理由はありますか?
白井市は梨のまちです。梨づくりは、育てて、待って、収穫して、また土に戻していく。私はそこに、子育てや介護と共通するものを感じています。結果を急がず、人を育て、見守る文化が白井にはあります。また、市民と行政の距離が近く、顔の見える関係性があることも大きな魅力です。まずは白井市で育てていきたい。それが私の想いです。白井から「誰も、一人にしない」まちづくりを地道に進めてまいります。
Q:将来的には事業化も考えていますか?
もちろん継続のための仕組みは必要だと思っています。ただ、私自身は「儲けるためのサービス」として考えているわけではありません。利用者負担をできるだけ増やさず、地域の孤立や見守りの課題解決につながる仕組みとして育てていきたいと思っています。そのため、助成金や公的支援なども含めて模索しています。
Q:最後に、白井市の皆さんにメッセージをお願いします
私が目指しているのは、「ひとりにしないまち」です。AIだけで完結する未来ではありません。AIが気づきを届けて、その先で動くのは家族であり、近所の人であり、地域の支援者であり、行政です。もしこの記事を読んで、「最近連絡していない人がいるな」「ちょっと声を掛けてみようかな」と思っていただけたら、それがRainbow Projectの第一歩です。白井から始まる小さな挑戦が、いつか全国へ広がっていくことを願っています。
Chiyoさん、ありがとうございました。
『Rainbow Project』ホームページ:https://project-rainbow-shiroi.rlacjseo.workers.dev/
【最後に】取材前は「AIを活用した地域課題解決の話」と思っていました。しかし実際にお話を伺うと、その根底にあったのは技術ではなく、「大切な人を見守りたい」という想いでした。子育てをしながら、仕事をしながら、それでも地域の未来のために行動する。その姿は決して派手ではありませんが、白井市らしい温かさと行動力を感じさせてくれます。白井には、梨づくりに情熱を注ぐ人がいます。クラフトビールで地域を盛り上げようとする人がいます。そして、AIを活用して「ひとりにしないまち」をつくろうとする人もいます。地域を変えるのは、大きな組織や特別な誰かだけではありません。身近な課題に気付き、一歩を踏み出した市民の挑戦から、新しい未来は生まれていくのかもしれません。Rainbow Projectの今後に期待するとともに、『しろいまっち』もその歩みを見守っていきたいと思います。
取材日:2026年5月23日
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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